人の不幸は蜜の味 シャーデンフロイデ

嫉妬という感情は、人の人たるものとして、そこを無視して人間を語ることはできないというほど、誰の心にも潜んでいるもの。

1994年に少女漫画家業界を描いたドラマのタイトルにもなった、「人の不幸は蜜の味」。これは世界中で、言葉を変えて言われていることだ。ドイツ語では、シャーデンフロイデ=他人の不幸を喜ぶ、というそう。

「人の不幸は蜜の味」という感情こそが嫉妬の本質であり、人間である証明ともいえるのだ。嫉妬の感情をもって見ていた相手が失敗したり悲しんでいる姿を見ると、心配しているふりをして心の中では大笑いしたり、万歳している。そんな光景は、今までの人生で山ほど見てきたし、私自身も相手の失敗や苦しみを喜ぶことも、時にはあった。

ところで、嫉妬という感情の正体を考えたことがあるだろうか?世界中に「人の不幸は蜜の味」という意味の言葉があるのであれば、これはもう誰の心の中にも潜んでいる感情である。しかし意外と、その嫉妬という感情の正体について、考えたことがない人が多いように思う。

友人に、「あなた彼女に嫉妬してない?」なんて言うと、多くの場合、相手からの反発の言葉の数々を浴びることは必至。心に思っても、決して相手に伝えてはいけない。はたからみると明らかな嫉妬であっても、その人自身は自分が嫉妬心という感情を持っているとは気がつかず、ただ自分を守っているだけとか相手が嫌いなだけとか、自分が納得する言い訳を心に描いているからだ。

「嫉妬している」と言われると、なぜだか日本人は「責められている」とか「非難されてる」と感じるらしい。つまりそこには、「嫉妬ほどいやらしい陰湿な感情はない!」という社会の先入観というか、固定概念が存在するからに違いない。

しかし、嫉妬はいつから陰湿な感情にカテゴライズされるようになったのだろうか。人の人たる所以が嫉妬の感情であるならば、それは、決してネガティブな一面だけではないはずだ。なぜなら物事は常に表裏一体であるから。コインの表がネガティブならば、その裏は必ずポジティブなわけで、一方だけしか存在しない、ということはこの地球上にはあり得ないのだ。

左と右があり、北と南があり、内と外がある。男がいれば女がいて、つねに物事はバランスしている。何かがバランスよく働くのがこの地球上の不変のルールだ。

ある心理学の実験がある。
ある学校の1つのクラスを成績によって2つに分けた。1つはとても優秀な人たちの集団。もう1つはそれ以外の人たち。(普通から優秀でない人達)。しばらく経つと、優秀な人達だけで作ったクラスのはずが、優秀な人とそうでない人が明確に分かれ始めた。そして優秀でない人達のクラスも、優秀な人とそうでない人になっていった。しかもその2つに分けたはずのクラスの平均点は、同等レベルになった。

これがバランスの証明なのだ。どんなに優秀な人だけにしても、またそこから優秀な人とそうでない人が生まれる。しかもほかのクラスと何ら成績の平均点は変わらなくなるというのだから、不思議だ。

この地球という世界において、バランスが存在しないことはありえない。だから物事は常に表裏一体で、それがこの先の未来で変わることは決してない。

話を元に戻すと、つまり嫉妬の感情が「陰湿ないやらしい感情」というだけではないこと。では嫉妬のポジティブな面は何だろうか。それは自己成長ということなのだ。

嫉妬の感情があるからこそ、「あいつに負けない!」という決意と覚悟の感情が生まれて、嫉妬の感情が原動力となって自己研鑽に邁進できる。自分をドンドン高めて、見返してやろう!という気持ちに転換することさえできれば、嫉妬は自分が大きく飛躍するきっかけとなってくれる。

むしろ人は悔しさから成長する。遠い昔のCMのキャッチコピーに「絶対きれいになってやる」というものがあった。失恋した女性が泣きはらした顔でつぶやくシーンが印象的だったのを覚えている。調べてみたら、エステティックのTBCが坂井真紀さんを起用して制作したCMだった。当時のCMソングは竹内まりやの「元気を出して」。

この短い30秒のCMの背景に見えるのは、ひとりの女性が恋人に振られ、他の女性に奪われた、というストーリー。失恋の苦しみと彼がほかの女性を好きになってしまったという嫉妬心から生まれる決意と覚悟。

私はこれこそが、嫉妬の本質だと思うのだ。

男性にも言えることで、同期の同僚が先に出世してしまった。彼から見れば自分の方が優秀なのに、世渡り上手なだけの同僚が先に出世する。そういう姿を見て悔しさと嫉妬で、1年後には営業成績トップになる。ということは、よくある話だ。

自分の心の中に嫉妬という感情が湧いたとき、人はなぜかそれを否定する。私の感覚ではあるが、その傾向は日本人に強いように思える。嫉妬という感情が「いやらしい」「陰湿」という固定概念に縛られているからだろうけれど、私は嫉妬の感情こそ、自分を成長させる大きな原動力となってくれると思うし、その感情を上手にコントロールして持ち続けることができれば、自分が想像している以上の大きな成功を掴むことができるようになるのだと信じている。

自分が嫉妬をしている、という、ただこれだけのことを認めるのは、非常にハードルが高い。しかし認めてしまえば、あとは自己研鑽のみ。あっという間に幸せや成功を掴むことができるに違いない。

大事なことは、決してライバルや他人に「人の不幸は蜜の味」と言わせない自分を作ることだ!

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この記事を書いた人

株式会社KIZUNA
日本におけるキャスティングとロケコーディネート、マカオ・香港のロケコーディネート・キャスティング・スタッフィング、日本人向けの旅行・視察アテンド業務・プライベートガイドを行っています

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